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【特許紹介】セルフレジ特許

ユニクロファーストリテイリング)との訴訟で話題になった特許第6469768号について紹介します。特許権者がユニクロのセルフレジを特許権侵害で訴え、ユニクロ側が無効審判をかけるものの特許無効とすることはできず、最終的には和解決着しました。ライセンス料を支払うことにしたのだと思います。

まず、特許の内容を紹介します。RFIDの読取装置で、蓋のないシールド付きの収容部に商品を置いた状態でRFタグから情報を読み取るというものです。

【請求項1】
  物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、
  前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、
  前記アンテナを収容し、前記物品を囲み、該物品よりも広い開口が上向きに形成されたシールド部と、
を備え、
  前記シールド部が上向きに開口した状態で、前記RFタグから情報を読み取ることを特徴とする読取装置。

特許6469758図1

このように、非常にシンプルな内容の特許です。第一印象では、こんなアイディアであればすでに誰かが考えついていて特許にならなそうに感じます。ですが、こういうシンプルな発明は、もし特許になるなら内容がシンプルで基本的であるからこそ、逆にとても強い特許になるのです。

ユニクロのセルフレジは以下の写真のようになっています。

Photo by Masahiko OHKUBO, licensed under CC BY2.0

まさに、蓋のない収容部に商品を入れてRFIDを読み取るので、権利が有効であれば侵害が免れないでしょう。

本当に先行技術がなかったのか気になるのですが、特許庁での審査の内容を見ると、蓋をするタイプの収容部や、ショッピングカートに搭載したカゴを挿入できるように前方部分が空いていて上側は閉じている収容部が引用されています。

出願時点では「開口が上向き」という限定はなかったのですが、これらの先行技術による拒絶理由を受けた後に「開口が上向き」の限定を付けて特許になりました*1

前方が空いている収容部であれば特許権侵害にはならないですが、それだとカゴの出し入れが大変だったり、商品を取り出すためにカゴを収容部から抜いたりする必要が生じるので、本発明(およびユニクロの実施形態)の内容が実用的なのでしょう。

こういうシンプルで強い特許を取った発明者は素晴らしいと感じます。

*1:無効審判において、アメリカの特許に「上向きの開口」の技術があるとして請求項1は無効理由ありという予備的見解が出たが、請求項3は無効にはならなかったようです。請求項3は、シールドの壁が内側に電波吸収材で外側に電波反射材という内容。